なんとなく思いたって、0歳から3歳まで住んでいた街へ、そのとき以来初めて行って来た。
タキが明日行こうかーと言ってくれて、腰の重いわたしたちには珍しく急に出かけた。
わたしの住んでいた団地がいまもそこにあるのだけど、半世紀経ったわけで、もうなくなってしまうかも知れないと思って、前からいちど見てみたかったのだ。
母はその街に引っ越した日まで、どんなところかも知らなかったと最近になって言っていた。
海が近く、よく海岸に連れて行ってもらったらしいけど、わたしの記憶はまるでない。
3歳くらいまでの記憶って、ごく断片でもなにかひとつかふたつはある、と言う人は多い。
海なのにね。海くらい覚えておけよ、わたし。と思う。
もわっとした空気のなかを歩き続け、ようやく見えてきた団地はきれいだったし、日常の気配がドッコイあって、半世紀前のユーレイなんか知らんよ、という感じだった。
でも、あの柵付きの窓に座って外を見るのが好きだったというあやちゃんには、一瞬、下からぼへっと見あげているわたしの姿が見えたかも知れない。
なにあれ。へんなおばあちゃん。よわそう。
電車を乗り継ぎ江の島へ出て、そっちで海を見て来た。
お気に入りの居酒屋があり、久しぶりにそこでのむのも目当てだったのだ。
カウンターに座ったら、忙しく働く板さんが、おすすめのお酒など親切に教えてくれた。
それから帰るときに、お店の外へ追って来て、火打石をなぜか打ってくれた。
一泊して、写真は翌日、湘南のレストランの丸窓から見た海。
たくさん歩いた。
あした9月8日月曜が十五夜です。やっぱり中秋の名月は曇りが多い。
見えるかな。見えないかなあ。