なんだかバタバタしてしまっていましたよ。
そのある日、悩みごとで悶々としながら電車に乗っていたら(はたから見て、ぬぼーっと突っ立っていたと思うが)、ある駅に着くときに、見覚えのある形が目に飛び込んできた。
あのシルエットなんだっけ・・・。そしてその隣に立っているそれより少しだけ小さなシルエットも知っている気が・・・、そう、凛だ。あー凛だから明日香でしょ。明日香だから、凛でしょ。
ちょうどわたしと二人が向きあうところで電車が止まる。二人ともマスクで顔が見えない明日香と凛、同時に目だけまん丸くする。あはは親子だね、同じ顔で驚いてるよ。
なんかうれしかった。すごい偶然。それだけのことだけど。
ところで先週観た芝居がおもしろかったのだ。
シアタートラムの「現代能楽集? 『花子について』」。
作・演出が倉持裕だったことと、片桐はいりをチラシで見て、あー片桐はいり、わたし、舞台でずいぶん観てないよな観たいな! とチケットをとっていたもの。
片桐はいり、もーすてきでしたよー。とっても。
タイトルどおり能を現代アレンジで舞台化する企画公演ですが、今回は能「葵上」狂言「花子」三島由紀夫作「近代能楽集『班女』」の三題。
つまり男女の情念が主題ですが、スタイリッシュな演出でドロドロではなく、スカッとした観心地。休憩が間に二度入って、あっという間の二時間半、たのしい観劇だった。
演出としては、特に最初の「葵上」(はダンス)冒頭シーンが良くてノックアウトされた。
開幕すると舞台上に真紅の部屋と真っ白な雪の庭。真紅のベッドの中で眠る女の姿と、雪の庭に打ち捨てられたように、うずくまって家を見つめる不穏な女の姿が現れて、美しく残酷な一枚の絵のようなのだが。
それが。女の怨念が響いたように地面が動いた。地震のように震えた、いや、水のように波だった? と思うと、波が激しくなり、ああ膨らむふくらむ。膨張していく。と思うと、吹雪のようになって。うわー。でした。その後がまた怖いんだ!
開演前に当日チラシを見てたら衣装と衣装協力と衣装製作のクレジットがあってものすごく長い名前の列があって、可笑しくなっちゃったくらいでしたが、これは・・・と期待したとおりの衣装もあり。
振り返る暇がなかったけどいま振り返って、贅沢な時間だったな。