にらをおろしでねーとちょっと意外だったけど、おいしい!
小松左京の短編集「石」(出版芸術社)を読んだ。
ホラーを選んだアンソロジー、15作品のどれもが名作揃いで、60・70年代に書かれたものだが「古びることのない」という言葉じゃ、簡単過ぎるような。
いまごろなにを、と嗤われるだろうが、ほんとうにすごい作家だった。
そして怖い、全作品怖い。怖がりのわたしがよく読めました。
そのすごさについて、わたしがなにか言うのはばかばかしいからいつものように脱線すると、うまい作家はひとの動作を書くのも巧いのだな、と思ったりした。日常的な動作を文にするのは実は難しい。読んですんなりその動きを追える、または自分が動いていくかのように書くのは、たいへんなことである。
ことに恐怖を描くというのは、人物の動作の積み重ねと深く関わっているのかも。
「それ」がどんなに恐ろしいかの描写より、またはどんな恐ろしさかの心理描写より、なにをしているときに違和感を感じるか、見えるのか、聴こえるのか、体に触れるのか、それを次にどう探るのか、ひとつひとつの動きから、恐怖は積まれていくものなのかも。ゾク!