ことしは桜を見なかった。目に入ってもああ、咲いてるな、ああ、もう舞ってるなと。
捻じ曲がりそうなこころを、ひとにぶつけたりはしなかった(そんなことしたくない)けど、桜にはやつあたりしたかも知れない。
やっと見あげてみたのは、いちばんのどさくさの最中だった。
「......やあ」とぼやいてみても、桜はやっぱり桜で。