中日(なかび)は夜だけの公演。
だからというわけではないが、二日目公演終了後、なにやら打ち上がっちゃった人がいた。
イトウヒロキ君である。
ベロンベロンで居酒屋に現れた彼は、肘にドレッシングをでらでら大量につけたまま、そのまま強引に身振り手振りで喋ろうとする。
やがて、感極まって泣く。
まだ早いから、と一斉にツッコミが入る。
翌日、つまり中日。
少し二日酔いのイトウヒロキの表情はしらっとしていた。
逆に、何ですか、みたいな。
そうやって、転換時のビル移動の練習をしている。
それを見て不安になって、ぼくも脚立を出す練習をした。
他に何かしなきゃいけないことがあるような気もする。
が、おかげで長らく続いた脚立問題は解決した。
今までは脚立に小物を載せた状態で運んでいたため、ヒトタビ脚立をひっかければ、暗転中にすべてがひっくり返る、という惨劇に繋がった。
しかし、小物を別に用意し、まずは舞台上に脚立を速やかに設置。
その上にゆっくりと小物類を配置すればいい、ということに気付いたのである。
まさにコロンブスの卵的大発想。
素晴らしい発見だ、と思って舞台監督のフジモトさんに報告した。
「うん、知ってた。なんでそうしないのかなって思ってた」
あのう、ええと、うんと......バカだったんです。
その夜、イトウヒロキ君のようにベロンベロンになってやろうかと本気で思った。