本番の前には当然のように下準備が必要で、それをば称して『仕込み』と呼ぶ。
我々スタッフだけではなく、前述の細田刑事も仕込みの助っ人として駆け付けたが、ぼくはリトル遅刻してしまった。
すみません、皆様......という懺悔もありつつ。
下準備が終わると、場当たりやゲネプロが速やかに行われる。
照明が加わると稽古場で観ていたものよりも、飛躍的に面白くなった、という感想。
照明担当のシムラさん、稽古場では頑固一徹職人、やるときゃやるよ風な雰囲気を醸し出していたが、なるほど、と頷かざるを得ない。
本番はきっともっと完成度が上がる。
一瞬ワクワクしたものの、本番がどうなっているか、ぼくは一部始終をただボンヤリと眺めているわけにはいかないのであった。
なぜなら、ぼくにはやらなければならないことがある。
・『悪意の研究』が終わった後の暗転、次の『彼らは雨を連れてやってくる』に必要な脚立等小道具(冒頭のヒラヤマさんがお弁当食べているシーン)の準備。
・『Fool On The Roof』出演のユタ氏の出入りの介錯。
・『Fool On The Roof』が終わった後の暗転、新聞紙の片付け。
・『オドル』直前のおしりダンス(小道具設置)出演。
・『オドル』終了後の小道具はけ。
以上、五つ。
ずっと下袖にこもりっきりの『下袖の帝王』として君臨するのであるからして、本番の様子を真正面から観ることができないのである。
そんなんで後日談を語れるのか、今ちょっと心配です。