『彼らは雨を連れてやってくる』に出演のイトウヒロキは日々悩んでいる。
そもそも、今のところ年齢的な関係性を踏まえつつ、全出演メンバーのなかでボクが「センパイ」と呼ばれても違和感ないのは、このイトウヒロキくんだけである。
捨てられた子犬のような瞳で「センパイ」と呼ばれると、思わず「おう、なんじゃい、どした、気にスンナ」と自然居丈高にふんぞり返ってしまう感があり、実は自分、相当縦社会が大好きなのではないスかね、と認識させられてしまう。
そんくらい切ない目をして、くんくんボクを見上げているのである、ふふふ、よしよし。
ある日の稽古が終わった後、イトウヒロキくんと二人でお酒を呑む機会があった。
イトウヒロキは雨に濡れたダンボール箱の中で、様々に悩んでいた。
お酒という名のお水を与え、焼き鳥という名の餌を与え、そしてジュウブンに掌で撫で回す。
はぐはぐ甘え始めたところで「人生そんなに甘くないッ」つって制し、終電で帰った。
途端鬼。
やはり、捨てられた子犬のような瞳で去り行く私を見つめていた、彼は。
とあれば美しいが、実際はお互いスぃッと別れた。