ヒロキがくまに感謝を捧げ終わったその頃、
刑事くんの髪型がとある美容院にて完成した。
あっちとか、こっちとかで、いま書かれまくってる刑事くんのことだ。
わたしこそ刑事くんについて書く権利がある。
「誰も知らない」刑事くんのことを...。
タカギ・ノボルのお手伝いでなぜか、わたしは刑事くんと日曜ごとに会い、服屋に行ったり、服を買ったり、美容院に行ったり、お酒を飲んだ(あ、最後のはミッションと違う!)
タカギ・ノボルのブログを読むと、ああ、そんなに刑事くんのことが好きなら、わたしでなく、自分で刑事くんと日曜日を共に過ごせばよかったのにと思う。不可解、不条理である。
しかしなにが不可解不条理って、刑事くん本人のほうだったろう。
よく知らないオバチャンと出かけ、服のなかへ突進していくオバチャンの背中を眺めながら、おれはどうしてなぜここにいる、と何度も己に問いかけていたことであろう、うんうん。人生とはね、すべて不条理なものだようん。
そしてこのオバチャン、話しかけまくる。
「暑いね刑事」(夏は暑いだろう)「刑事、その髪型はヤバイよ」(余計なお世話だろう)「刑事、ちょっと触っていい?」(セクハラだろう)「疲れたね刑事」(疲れた)「飲もうか刑事」「違う違う、あたしが飲みたいの刑事」「つきあえ」
更に飲めば飲んだで。「刑事、チケット売れた?」「チケット売ろうか刑事演技なんか後」「演技してたら芝居できるってもんじゃないよお客様のおかげで芝居できるんだよ」
ムチャクチャです、オバチャン。
そんな気の毒な刑事くんであるが、オバチャンは刑事くんのことを少しは知っている。ようになった。
きっとね、刑事くんのことは、男より女のほうがわかりやすい、のだと思う。
あんまり上手く人づきあいできないのよね、「あ...はい」とか「や...そういうわけでも」とかって、おずおずしちゃうのね。そういうひとっているでしょと言えば、女性のみなさんなら、ああ、と頷くはず。
つまり、ごくふつうです。
ふつうって言ってもさ、個性のないふつうのひとなどいない。
ゆっくり聞いてると、いろんなこと考えてるし、なかなか、いい顔もする。
それに、芝居をすることが、好きだ。
いい作品といい演出、いい共演者に恵まれたら、あとはきみが、その手で、なにかを掴むしかない。
なにか掴んでもなにも残らないかも知れない。それを恐れちゃだめ。
オバチャンから言うことはもうなにもない。あとは本番を見守るよ、刑事。
完成した髪型での写真をここにのっけようとしたら、タカギ・ノボルに止められた。不可解である。
もしノバディノウズ刑事に会いたければ、来週8月5日から9日まで、下北沢「劇」小劇場へ、
行くしかないわけである。