暑いときに食べたくなる、あっさりした、でも辛いカレー。
先週土曜日に、伊藤浩樹が出演した芝居をタキと二人で観てきた。
土日2日のみの公演で、会場は20人もお客さんが入ればいっぱいの、小さな公演だった。
でもそういう小さなところでしか味わえない、体験がある。
役者の息遣いや、動悸まで聞こえそうな場所だからこそ、だが、お客さんに届いたのは、場所のためばかりでなく、この芝居を作ったひとたちの意思だろう。作・演出(出演も)の矢田政伸さんはすごいひとだなと思った。
そういうことはあとから思ったことで、観ている間はとにかくおもしろがって観ていた。
たくさん笑い、驚き、伊藤浩樹が出るときには少し緊張もした。
イトウヒロキのことは、また「ゴゴアメメンバー」にも書くけれど、2005年にわたしの作品に出演してもらったとき以来、舞台の出演をしていなかった。
その間、やつはなにもしていなかったわけでなく、映像の仕事にがんばったり、くじけたり、働いたり、毎日働いたり、時々はウチに来て酒を飲んだり、寝ゲロをはいたり、青ざめて非常なる恐縮をしたり、実にいろいろであった。
忙しい男なのである。
ほんとうにイロイロであったため、終演後の客席で、ふいに胸にこみあげてしまった。
お客さんたちが誰もなかなか立たず、静かにアンケートを書いていて、いい感じだなあ、よかったなあ、という思いと、密かに、かなわないな、という思いが混ざり、そのどれとも別に、あ、ヤバイ、と思った。ヤバイ、どうしよう。
しかしわたしはしっかりと、目と鼻をハンカチで素早く強くぐしぐしとぬぐった。
わたしがどんなにへっぽこエンシュツであろうとも、まだエンシュツを名乗る気なら、ここにはゆずれないラインがある。
表でやつに顔を合わせるのだから。
表で待っていたヒロキは、タキが「よかったよ」と一言言う、その「よ」でもう泣いていた。
早いよ。だし、まだ初日初回だってんだ。
そしてタキもつられて「う」と涙ぐんでいた。
「いや...いやいや」「いやー!」と泣きあっていた。
そんな彼らを指差して、ばーかでーばーかーでーとわたしは大笑いしてやった。
ふはははは。男とはほんとうにばかである。