伊豆、曇り。
雨女、雨男、雨夫妻といわれるタキとわたしだ。みんなで花見などしようとすると必ず雨になり、呆れられている、を通り越して、諦められている。でも実は、二人で出かけるときにはあまり、雨は降らない。許せ、みんな。伊豆でも梅雨なのに降らなかった。もっと晴れていれば海ももっときれいに見えただろうけど、日差しが強くない分、過ごしやすくていい。東京のほうが暑かったみたいだ。
伊豆に行くと、もう10年以上前から必ず寄るのが、「ガラムマサラ」というカレー屋。
ここのカレーはスパイスがたくさん使われていて、基本的にはインドカレーなのだが、ちょっとほかでは食べたことのない味、このお店独特の味だ。
一口目はそんなに辛くないかな、と思う。二口目からはどんどん汗だくになる。辛い。わたしはなぜか鼻水が出てくるので失礼ながら食事中に何度も鼻をかむ。辛いだけでなく複雑な味で、ほんとうに美味しい。飽きない。おなかいっぱいのときでも食べてしまう。そして胃にもたれない。
お店は伊豆高原駅からタクシーですぐ。店の名前を言うと知らない運転手さんはいない、近くに行かれる方はぜひ。ぜったいおすすめ。
窓からは林が見え、静かで、カレーの味と同じくずっと変わらないテーブルや椅子や食器がひっそりと待っている。
テーブルの上にはいつも、草花が無造作に飾られている。花屋で売っているのとは違う、林のなかで摘みとったばかりのような花で、どこか形がわるかったとしても、なにかはっとするくらいきれいだ。凛としていて、それなのに妖気があるような。
この日はあじさいが迎えてくれた。あじさいは、好きな花のひとつ。
でもどうしてこんなに、はっとさせられるのだろう。
首がとれたり身体が小さくなったりするので少し休もう、と中抜けして、伊豆に一泊してきた。
時々、たまらなく海が見たくなる。じっとしてはいられなくなる。
そう言うとよく、似合わないと笑われる。確かに波乗りには見えまい、釣りをするようにも見えまい、第一、泳げもしないのだ、お日様に当たらないので白くひょろひょろだ。
なぜ海が好きなのか、自分でも不思議だ。
両親が共に四国の香川県生まれなので、DNAに海の記憶、匂いとかあの気温とか、が刻みついているのか。
それか、生まれてから3歳くらいまで暮らしていたのは神奈川県の藤沢市で、記憶はまったくないけど、海が近く、よく連れて行かれたらしい。部屋の窓から海は見えなかったが、夜、暑い夏に窓を開けていると、波音が聞こえたと母が教えてくれた。波音を聞くと、懐かしくほっとするのはそのせいなのだろうか、そういうことにしておく。
さて伊豆は赤沢温泉に泊まった。温泉に入ると、首と背中の痛みが消える、けど、すぐあとからまた痛い。
あーあ、一泊でなく、一週間くらいいたら治るんじゃないかなあ!
公演準備期間中で毎度のことながら非常に煩雑な日々だ。
自分のやることが多いのはいいが、ひとにお願いごともたくさんして、
いったい誰になにを頼んでいるのか、わからなくなりそうになるくらいだ。
能力のあるひとたちは忙しい。その忙しいひとたちを捕まえて、スミマセンスミマセン、
と、無料で、またはほんのわずかなお礼でお願いごとをする。
「私は泥棒なのだ」と思わずにはいられない。
その泥棒の言うことを、おもしろがって引き受けてくれるひとたちがいる。
ありがたくて、うれしい、けれど、身が縮む。
当然のことではある、しかし、気をつけなければならない。
経験からこういうときに起きることがわかるようになった。
注意してさえいれば、住み慣れた駅のホームへの階段がうまく降りられないことに、
ちゃんと気がつく。歩幅が違っているのだ。
その次には洗面所の蛇口が近く感じるようになり、その次にはキッチンの棚に手が届かなくなり、
食事をとるにもテーブルに手が届かなくなり、床をはいはいするまでに、縮んでしまう。
そうなる前に、自分で意識することが大事だ。
案の状、きのう、美術さんと打ち合わせの後の帰りに、駅の階段でよろめいた。
きたな、と思った瞬間、背後から「きゃ」と小さく悲鳴があがって、
「大丈夫ですか」駆け寄って手を差し伸べてくれた女性がいた。
見ると、色白のくっきりした目のきれいなお嬢さんだ。
悪い癖できれいな女性を見ると心中、だらしなくなり、その滑らかな手に必要以上に
しがみついた。
ぷん、とくちなしの花の香りがする。
「スミマセン、ありがとう」謝りながらも口はどんどん勝手に、
「スミマセン、安い印刷会社をご存知ですか、スミマセン、それか安い弁当屋は。
スミマセン、10月にお暇はないですか、突然スミマセンがもしよかったら、お芝居を
観に来ませんか、それかスミマセンがよかったら受付のお手伝いを」
最後のほうは花の香りのお嬢さんの、靴しか見えなくなった。
小鉢というものが好きだ。
水菜のおひたしに鶏そぼろ(しょうがを刻んだのと、ゴマ油で炒め、
ほんのちょっとのしょうゆとみりんで薄味をつける)をかけたのが気に入ってる。
簡単で、おつまみにもおすすめ。
首と背中が痛い。
パソコンの前で一日じゅう文を書いていたりすると、背中が痛くなるのだけど、
このところはそうでなくても痛い。
朝、起きたら、どこか高いところから落ちたのじゃないか(落ちたことはないが)
というほど痛かったりする。
たまらなくなって、整形医院に行くと「それは首だ」と言われ、
首のレントゲンを三方向から撮られた。
そんなに曲がってはいなくて、やや不安定とのこと。
薬を飲み、治療を受けてみるも、痛い。
厄介なもので、パソコンに向かうはもちろん、芝居や映画を観るのにも困るし、
本を読むにも困る、料理や洗いものもツライ、寝ていて良いのならいいのだが、
寝るのも痛い、座っていても痛い、お酒を飲むと唯一、痛くなくなるが
これはもちろん、麻痺しているのであって、あとから痛い。
四六時中痛いと疲れる、首をぽん、とはずしてどこかに置き、一服したくなる。
などと思っていたら、自分で気づかぬうちに、パソコンのキーボードを寄せどけていた。
おお、やれやれ。
やってみるものだ。
煙草をつまみ、一瞬惑い、まあふつうに火をつけてから、
煙を吐き出す首を眺めて、
「一服したいのはこっちだよ」と思う。
いまはほとんどビールを飲まない。
前ならビールの写真など見たら、もういますぐ! 飲みたくなっただろう。
友達のarayaと昔、「ビール星」と言っていた。夏にはよく使う言葉だ。
使用方法としては「夕方の6時ね、そりゃもうビール星にいるね」とか、
一緒に飲めそうなひとがいれば「ビール星人現る」、または暑くてたまらない日や、
疲れたときは自分の中からも「ビール星人アラワル」。今夏、あなたもどうぞお使いください。
ああ懐かしきビール星よ!
最近はしばらくぶりのひとに会うと「最近、お酒も弱くなりまして」
相手を少しほっとさせておいて、
「だからイキナリ日本酒です」と怯えさせる。しかし、ほんとうのことだ。
...韓国ふう肉じゃが、コチジャンとみそでぴり辛です。
ビール星にはうってつけ。
はじめまして。
ごぶさたしています。
こんにちは。こんばんは。吉永亜矢デス。
以前は「シエラザード」という名前で、演劇のプロデュース公演を行っていました。
今年、またあたらしい試みをしていこうとあたらしい名前をつけました。
「午後から雨になるでしょう」
でしょうと言われても。というところが気に入ってます。
窓から、ぱかんと晴れた空を見あげているとき、天気予報がラジオから聴こえ、
なんだか不思議な心持ちになる。
そんなことが浮かんで、それはおかしがってるのか、不安なのか、すぐに忘れちゃうのか・・・
ただ空は青く雲ひとつなく。
ちょっとへんてこな名前で、はじめました。
どのようなあたらしい試みなのかは、「ゴゴアメ#1公演情報」やブログにて、
ご紹介していきます。
なにとぞ、よろしく。